経営者(特にオーナー経営者)の場合、個人と会社の双方に資産を蓄積しているため、相続税は多額になることがあります。
しかしながら、資産として売却することが困難なものも多いため、計画的に準備をすすめないと、多額の相続税の工面に悩まされることになります。
そこで、経営者のための相続対策に有効な方法を以下に説明いたします。
生命保険は「みなし相続財産」として相続税の対象となりますが、500万円×法定相続人の数だけ非課税扱いとなります。
この場合、
● 保険料は被相続人が負担する(贈与税の基礎控除:110万円/年以内は非課税)
● 必ず保険が受け取れる保険を選ぶ
ことがポイントとなります。
※尚、保険金は現金で支払われるため、計画的に準備をすれば、相続税の納税資金として活用できます。
生前、役員退職に伴う役員退職金、弔慰金に関する規定を整備しておくことで、死亡退職金・弔慰金を相続対策に活用することができます。
相続税の計算上、死亡退職金は、500万円×法定相続人の数まで、弔慰金は普通給与の半年分(業務上の死亡の時は3年分)まで非課税財産とされ、支払った会社は全額損金となります。
しかしながら、「社会通念上相当である」と認められない弔慰金は否認される可能性がありますので、役員退職金規定、弔慰金規定も含め、早めに税理士に相談されることをお勧めします。
贈与税の配偶者特別控除とは、居住用の不動産、あるいは、これを購入するための資金として、夫から妻 (または妻から夫)への贈与を2,000万円まで非課税とする特例を言います。
尚、この非課税枠は、通常の贈与における年間の基礎控除額である110万円と同時に適用できるので、最大2,110万円までを非課税とすることができます。
同族会社の経営者が死亡して相続が発生した場合、最も困るのが、自社株式の扱いです。
非上場株式の場合、株式をいくらで評価するかで、相続財産の金額が大きく異なりますし、相続税の納税資金を用意するにも、売却できる資産が少ない場合が多く、納税資金の工面も大変です。
そのため、経営者のための自社株対策としては
という大きく3つの対策が必要です。
自社株の評価は「1株あたりの株価×株数」で決まりますので、相続発生までに株式数を減らしておくことは、相続財産を減らす上で最も有効です。
贈与税の基礎控除は、受贈者が何人いても、何年でも年間110万円まで非課税のため、長期にわたって計画的に実施すれば相続財産を大幅に減らすことができます。
贈与税の基礎控除 | 受贈者1人につき、年間110万円まで非課税 |
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相続時精算課税制度は、贈与時には贈与税を軽減することで、早期の資産の移転を促進し、 相続発生時に贈与分を含めて相続税を計算する制度です。
一度使うと暦年課税に戻せないというデメリットはありますが、
という特徴があるため、
例えば、事業が好調で、株価評価が上がっている時の事業承継対策には非常に有利となります。
相続時精算課税制度を活用するかどうかは、高度な判断を要するため、必ず税理士に相談するようにしてください。
次に、株式の評価ですが、非上場株式の場合、取引相場がないため、国税庁の財産評価基本通達の「取引相場のない株式等の評価」に基づいて評価します。
非常上場株式の評価は、会社の規模(売上高、総資産、従業員数によって区分)によって定められていますが、一般的に規模の小さな会社よりも、規模の大きな会社に適用する評価基準の方が、評価額が安くなります。
類似業種比準方式で株価を下げるには配当金額を減らす方法があります。
配当当金額は直近2年間の平均を用いますので、一時的に無配当にするなどによって、評価を下げることができます。
同じく、類似業種比準価額方式で株価を下げる方法として効果的なのが「利益を下げる」という方法です。
また、評価が純資産価額方式の場合、純資産を減らすことが自社株の評価減につながりますので、借入を活用することも有効な方法です。
商法改正に伴い、株主総会の決議があれば、会社が自己株式を取得することが認められました。 (会社が取得した自己株式のことを「金庫株」と言います)
これにより、納税資金対策として、相続した自社株式を会社に買い取ってもらい、その売却代金で相続税を納税する方法がとれるようになりました。
尚、相続による株式取得の場合は税の軽減措置が設けられているため、有効な納税資金対策となります。